この記事の要点
- 口コミマーケティングとは、お客様が自分の言葉で商品を語る場面を増やし、その声で新しいお客様を迎える取り組みです。
- お客様が「人に話したい」と感じた直後に感想を依頼し、投稿先のページへのリンクを送ります。
- 見返りを提供して依頼するときは、評価や書く内容を指定せず、投稿先のサイトの規約も先に確認します。
目次
口コミマーケティングとは、お客様が自分の言葉で商品やサービスを語る場面を増やし、その声で新しいお客様を迎えるマーケティングです。口コミはお客様が自由に書くもので、ブランドが書かせることはできません。ブランドにできるのは、話したくなる体験をつくり、投稿しやすくし、届いた声に応えることです。
この記事では、口コミが広がる流れを4つのフェーズに分け、ブランドが働きかけられるところと、増やすための5つの手順をまとめました。見返りを提供してお願いするときの注意(ステマ規制と投稿先の規約)と、効果の測り方も扱います。
口コミマーケティングとは

口コミマーケティングは、お客様が話してくれるのを待つのではなく、話したくなる場面と、話しやすい場所を用意する取り組みです。口コミは英語で Word of Mouth(WOM)と呼ばれます。
ここでいう口コミは、使った人が感想を伝えることすべてを指します。レビューサイトへの投稿も、SNS での感想も、友だちへのメッセージも含みます。
近い言葉に、リファラルマーケティング(紹介)と UGC(お客様が SNS などに投稿する感想や写真)があります。いちばんの違いは、ブランドが関われる範囲です。口コミはお客様の自由な行動なので、ブランドは内容に関与できません。紹介では、特典や条件をブランドが決めます。アフィリエイトも含めた違いは、リファラルマーケティングとは?の比較表にまとめています。
口コミが生まれるオンラインの4つの場所

オンラインの口コミは、主にレビューサイト、地図アプリ、SNS、メッセージの4つの場所で生まれます。場所によって、読む人と、ブランドができることが変わります。
| 場所 | 例 | 読む人 | ブランドができること |
|---|---|---|---|
| レビューサイト | 食べログ・Retty・Amazon や楽天のレビュー | 比べて選ぶ人 | 返信(できるサイトで)・商品の改善 |
| 地図アプリ | Google マップのクチコミ | 近くで探している人 | ビジネス情報の整備・返信 |
| SNS | X・Instagram・TikTok | フォロワー | 投稿したくなる場面づくり |
| メッセージ | LINE などのやりとり | 家族・友だち | 送りやすい文面やリンク |
レビューサイトと地図アプリの口コミは、探している人が自分から読みに来ます。SNS とメッセージの口コミは、まだ探していない人にも届きます。メッセージでのやりとりは外から見えないため、ブランドが数えにくい場所でもあります。
口コミが広がる4つのフェーズ

口コミは「体験→きっかけ→投稿→届く」の4つのフェーズを通って広がります。どのフェーズで停滞しているかが分かれば、働きかける場所が決まります。
| フェーズ | 起きること | ブランドが働きかけられること |
|---|---|---|
| 体験 | 使って、人に話したくなる | 期待を超える瞬間をつくる |
| きっかけ | 書こう・話そうと思い立つ | お願いの時期と伝え方 |
| 投稿 | レビューや SNS に書く | 投稿先へのリンク・手間を減らす |
| 届く | ほかの人が読んで動く | 返信・届いた声への対応 |
どのフェーズでも、投稿の中身を決めるのはお客様です。ブランドが動かせるのは、体験の質、お願いの時期、投稿の手間、届いたあとの応え方です。
見落とされやすいのは「きっかけ」です。満足していても、思い立つきっかけがなければ、書かないまま終わることがあります。
口コミを増やす5つの手順

口コミを増やすには、次の5つを順に整えます。
- 体験の山を決める: お客様が「人に話したい」と感じる瞬間を1つ決めます。商品が届いた日、初回の結果が出た日、目標を達成した日などです。
- お願いする時期を決める: 体験の山の直後に、メールや LINE 公式アカウントのメッセージで感想をお願いします。日がたつほど、思い立つきっかけは薄れます。
- 投稿の手間を減らす: 投稿先のページへのリンクをそのまま送ります。どこに書けばよいかを、お客様に探させない形にします。
- 届いた口コミに返信する: 良い声にも厳しい声にも返信します。
- 声を商品とページに返す: 繰り返し寄せられる不満は、商品や案内を直す材料です。直したら、返信やお知らせで伝えます。
返信について、Google ビジネスプロフィールのヘルプは次のように書いています。
クチコミに対し、有用で前向きな返信をすることで、ユーザーの意見を尊重していることを示すことができます。
返信は、書いた本人だけでなく、あとから読む人にも見えます。(関連記事:Googleの口コミを増やす方法|お願いの仕方と、やってはいけないこと)厳しい口コミに落ち着いて応えている様子も、比較・検討の材料になりえます。
2つ目の手順で、お願いに割引やクーポンなどの見返りを提供するかどうかは、後の「見返りを提供してお願いするときの注意」の節を読んでから決めてください。
海外の例:Duolingo は口コミを成長の中心に置いた


語学アプリの Duolingo(米国)は、米国の証券取引委員会(SEC)に提出する年次報告書(Form 10-K)で、口コミを成長の中心に置いていると書いています。
2024年度の10-Kによると、Duolingo の学習者のコミュニティは、ほぼ10年にわたって口コミで自然に広がってきました。有料の広告で利用者を集めるよりも、主に口コミと話題に頼って事業を伸ばしてきたとしています。そのぶん、資金をプロダクトの改善やデータの分析に回せるという説明です。
目を引くのは、マーケティングの役割の書き方です。ブランドのキャンペーンは、報道や SNS での共有を生み、口コミを増やすためのものと位置づけています。自社のメディアも、学習者が自分のつながりの中で Duolingo の良さを話す「ブランドの応援者」を何百万人も生む場だと書いています。
広告をやめて口コミに任せた、という話ではありません。マーケティングの仕事を「話題になるきっかけをつくること」に置いた、と読めます。4つのフェーズでいえば、「きっかけ」に力を注いだ例です。
Warby Parker は「勧めたい気持ち」を数字で示した

眼鏡の Warby Parker(米国)は、2021年8月に上場のために提出した書類(Form S-1)で、NPS を示しています。NPS は、お客様に「0〜10で、友だちに勧める可能性はどれくらいか」と聞いて算出する指標です。
S-1によると、同社の NPS は創業以来の平均が80を超え、2021年4〜6月は83でした。眼鏡業界の平均は30に満たず、自社の NPS は業界でいちばん高いと考えている、と同社は書いています。
口コミの手前にある「勧めたい」という気持ちを、上場の書類で数字にして見せた例です。
見返りを提供してお願いするときの注意:ステマ規制と投稿先の規約

口コミをお願いするときに確認することは、ステマ規制と、投稿先のサイトの規約の2つです。法律で問題がなくても、サイトの規約で禁じられていることがあります。
ステマ規制:投稿の内容を決めない
2023年10月1日から、いわゆるステマ規制(ステルスマーケティング規制)が施行されています。(関連記事:ステマ規制とは?紹介や口コミのお願いで、どこまでなら大丈夫か)一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示を、景品表示法の不当な表示として指定したものです(令和5年内閣府告示第19号)。
消費者庁のステルスマーケティングに関する Q&Aは、口コミのお願いについて例を挙げています。
Q6 は、利用後に予約サイトへ口コミを投稿することを条件に、サービスを割引価格で提供する場合です。投稿を条件にするだけで内容は指示せず、見返りが割引程度であれば、その投稿は次のように扱われます。
通常、「事業者の表示」には当たらず、告示に違反しないと考えられます。
同じ Q6 で、評価に「星5」を付けることを条件にすると、扱いが変わります。
事業者は表示(投稿)の内容を決定しているといえるため、「事業者の表示」に当たると考えられます。
この場合、Q6 は『事業者の表示』であることを明瞭にしなければ告示に違反する、としています。また Q6 は、星5に限らず「サービスの品質や内容、価格等の取引条件について推奨するコメントをすることが条件とされている場合も同様です」としています。お願いの文面では、評価の点数や書く内容(良い点、勧める言葉、触れてほしい点、例文など)を指定せず、感想を自由に書いてもらう形にします。
Q7 は、EC サイトで商品を購入したお客様に、レビューの投稿を条件として次回の購入に使えるクーポン券を渡す場合も、Q6 と同様に考えられ、通常は事業者の表示に当たらないとしています。
投稿の内容を指定していなくても、インフルエンサーに個別に投稿を依頼し、報酬を渡す場合は、次のとおりです(Q19)。
個別に投稿の依頼を受け、報酬を受領する場合は、当該投稿は「事業者の表示」に該当する可能性が高いといえます。
この場合、Q19 は「Z社から依頼を受けて投稿しています」のように、事業者の表示であることが明瞭になる記載をすることが適当としています。
3つの例から読めるのは、投稿の内容を指定したり、個別に依頼して報酬を渡したりすると、事業者の表示に当たる方向に寄るということです。
投稿先の規約:見返りを伴う口コミを禁じるサイトがある
ステマ規制では通常は事業者の表示に当たらないとされる形でも、投稿先のサイトが規約で禁じていることがあります。食べログの口コミガイドラインは、次のように定めています。
食べログでは、金品またはそれに相当するサービスを受けることを目的とした口コミ、お店のPRとしての口コミについては、投稿を禁止しています。
同じガイドラインは、禁止の例に「無料招待にて訪問した際の口コミ。(NG)」も挙げています。お金でなくても、見返りに当たるものは対象です。見返りを提供してお願いする前に、投稿してもらうサイトの規約を先に確認します。
なお、口コミのお願いではなく、紹介した人に謝礼を支払う形にする場合、消費者庁の景品に関する Q&A(Q31)は、紹介した人への謝礼を景品類に当たらないとしています。ただし、紹介できる人を購入者に限る場合は景品類に当たり、通常、総付景品の規制の対象になります。詳しくは冒頭で挙げたリファラルマーケティングの記事で扱っています。
口コミの効果の測り方

口コミの効果は、4つのフェーズごとに数えるものを決めておくと、どの段階で停滞しているかが分かります。
| フェーズ | 数えるもの | 伸びないときに見直すところ |
|---|---|---|
| 体験 | NPS・勧めたいと答えた人の割合 | 商品・使い始めの体験 |
| きっかけ | お願いを送った数・リンクを開いた数 | 送る時期・文面 |
| 投稿 | 新しい口コミの数・平均の評価・返信した割合 | 投稿先へのリンク・手間 |
| 届く | 口コミで知ったと答えた新しいお客様の数 | 返信・ページの分かりやすさ |
数字は、フェーズとフェーズの間の割合で見ます。NPS が高いのに投稿が少なければ、体験ではなく「きっかけ」または「投稿」の段階で停滞しています。投稿は多いのに新しいお客様につながらなければ、返信や届いた先のページを見直します。
「届く」は、申し込みフォームに「何で知りましたか」という質問を置くと数えやすくなります。メッセージでのやりとりのように、外から見えない口コミもここで把握できます。誰から聞いて来たのかまで記録したくなったら、紹介コードや紹介リンクを用意する段階です。(関連記事:紹介コードとは?仕組みと、入力漏れを防ぐ申し込みフォームの作り方)
口コミはお客様のものですが、話したくなる体験と、話しやすい場所はブランドがつくれます。まずは体験の山を1つ決め、その直後のお願いから始めてみてください。
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