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バイラルループ(viral loop)とは、お客様が知人を誘い、誘われた人が使い始めて、また次の人を誘う流れのことです。広告などで集めた人を購入まで絞り込むファネルは購入で終わりますが、バイラルループでは、新しく来たお客様が次の集客の入口になります。紹介が紹介を呼ぶ状態を、偶然に任せず設計するための考え方です。
この記事では、ループの段階ごとの設計表と、1周の速さ、仕掛けの選び方を紹介します。事例は、中国の EC の Pinduoduo や米国の送金アプリ Cash App など、EC・アプリ・金融のサービスから選んでいます。1人のお客様が平均何人を連れてくるかの計算は、バイラル係数とは?で扱っています。
バイラルループとファネルの違い:新しいお客様が、次の集客の入口になる

ファネルは、広告や検索で集めた人が、商品を知り、比べ、購入するまでを上から下へ絞り込む流れです。購入で流れが終わるため、次のお客様を集めるには、また広告や検索からの入口が必要になります。
バイラルループでは、購入したお客様が知人を誘い、その知人が新しいお客様になります。出口が入口に戻るので、1周するたびに、次の周を回すお客様が増えていきます。
米国で成長戦略を教える Reforge は、2018年の記事Growth Loops Are the New Funnelsで、こうしたループをグロースループと呼んでいます。ループは、入力がある過程を通って、より多くの出力を生む閉じた仕組みだと説明し、次のように書いています。
The fastest-growing products are better represented as a system of loops, not funnels.
最も速く成長するプロダクトは、ファネルよりもループの組み合わせとして捉えるほうが実態に合う、という一文です。
バイラルループの段階:どこに、どの仕掛けを置くかを決める

米国のベンチャーキャピタル Andreessen Horowitz(a16z)のパートナー Andrew Chen は、What's your viral loop?で、利用者がサイトに入ってから次の新しい利用者を招くまでの段階を、バイラルループと呼んでいます。段階に分けると、どこに何を置くかを1つずつ決められます。
オンラインで購入を受け付けるサービスに当てはめると、次の5つの段階になります。
| 段階 | お客様の動き | 置く仕掛けの例 | 点検で見る数 |
|---|---|---|---|
| 1. 使う | 初めて購入する | 購入完了の画面で紹介を知らせる | 初回購入の数 |
| 2. 価値を感じる | 商品を使って満足する | 届いた後のメールで使い方を案内 | 2回目の購入の割合 |
| 3. 誘う | 知人に紹介リンクを送る | 届いた後のメールに紹介リンク | 紹介リンクを発行した人の数 |
| 4. 誘われた人が来る | 紹介リンクを開く | 紹介された人の特典が分かるページ | リンクが開かれた数 |
| 5. 使い始める | 誘われた人が初めて購入する | コード入力済みの購入画面 | 紹介経由の初回購入の数 |
5で購入した人は、1に戻ります。紹介で来たお客様にも紹介リンクを渡せば、ループは2周目に入ります。
段階を分けておくと、紹介が少ないときに、案内していないのか、送られていないのか、購入されていないのかを切り分けられます。紹介コードを入力する欄の作り方は紹介コードとは?にまとめています。
1周の速さ:1周が短いほど、同じ期間で大きく伸びる

バイラルループは、1周にかかる時間で伸び方が大きく変わります。米国のベンチャーキャピタリスト David Skok は、Lessons Learnt – Viral Marketingで、この時間をバイラル・サイクルタイム(Viral Cycle Time)と呼んでいます。
Skok のモデルで、同じ条件のまま20日後の利用者数を比べると、1周が2日なら20,470人、1日に縮めると2,000万人を超えます。Skok はこう書いています。
reducing ct has a far more powerful effect than increasing K
1周の時間(ct)を縮めるほうが、K(1人のお客様が紹介で連れてくる平均人数)を上げるより、はるかに強く効くという指摘です。1周が短いほど同じ期間に周る回数が増え、その回数の分だけ増え方が重なるためです。
自社に当てはめると、1周は、お客様の最初の購入から、そのお客様に紹介された人が購入するまでの日数です。縮める方向は2つあります。
- 価値を感じた直後に誘う: 商品が届いて使い、満足した時点で紹介リンクを渡します。購入から何週間もたって案内すれば、その分だけ1周が延びます。
- 誘われた人がすぐ始められるようにする: 紹介リンクを開くと、紹介コードが入力された状態で購入画面に進む形にします。登録や入力の手間が多いほど、購入までの日数は延びます。
ここで扱う研究や事例の多くは、送金アプリ・銀行・クラウドストレージ・SNSなど、続けて使うサービスです。1回きりの購入が中心の商品では、次に使うまでの間隔が長く、1周も長くなりやすい点を差し引いて読んでください。
仕掛けの選び方:使うだけで伝わる仕掛けと、個別に誘う仕掛けを両方置く
ループを回す仕掛けには、使うだけで周りに伝わるものと、お客様が知人を選んで誘うものがあります。どちらが多くの利用を生むかを、ニューヨーク大学の Sinan Aral と Dylan Walker(いずれも当時)が Facebook 上の無作為化実験で検証しました(Management Science、2011年)。
対象は、実験の利用者9,687人とその友人140万人です。使うと友人に自動で知らせが届く仕掛けは、周りへの影響と利用の広がりを246%増やしました。個別に招待を送る仕掛けを加えても、上乗せは98%にとどまりました。
個別の招待は1通あたりの効き目では上回りますが、自動の知らせのほうが使われる回数が多く、全体としてより多くの利用につながりました。
自社のサービスに置き換えると、次の2つです。
- 使うだけで伝わる仕掛け: お客様が共有したものや、知人に届いたものに、サービスの名前とリンクが付く形です。たとえば、お客様が贈ったギフトの案内メールに、サービスへのリンクが入っている状態です。
- 個別に誘う仕掛け: 紹介リンクや紹介コードを渡し、お客様が選んだ知人に送ってもらう形です。1件あたりの効き目は強い一方、お客様に送る手間がかかります。
2つは役割が違うので、両方を置きます。
ループが回っている証拠:紹介で来たお客様は、ほかのお客様より多く紹介する
ループが2周目に入るかどうかは、紹介で来たお客様が、また誰かを紹介するかで決まります。Gershon と Jiang の研究(Journal of Marketing Research、2024年。著者の公開原稿)は、これが実際に起きていることを示しています。
- 10年・4,120万人のデータ: キャッシュバックのサービスを提供する大手のモバイル技術企業で、紹介で来たお客様は、ほかの経路で来たお客様より31〜57%多く紹介していました。
- 20社のデータ: 紹介の仕組みを提供する会社から得た20社(各社2万人以上・業種はさまざま)のうち19社で、紹介で来たお客様のほうが紹介を成功させる割合が高く、18社で統計的に意味のある差がありました。
- 思い出してもらう実験: 紹介で入ったことをプッシュ通知で思い出してもらうと、その後2日間の紹介の数が約21%増えました(1,000万人超の実験)。
2周目は実際に起きていて、案内で後押しもできます。紹介で来たお客様には、紹介で始めたことに触れながら、早めに紹介リンクを渡します。
事例:EC・送金アプリ・銀行・AI アプリのバイラルループ

「仕掛けの選び方」の節の2種類で分けると、Cash App は使うだけで伝わる仕掛け、Nubank と Muse は個別に誘う仕掛けでループを回しています。Pinduoduo は、誘うこと自体を買い方に組み込んだ例です。Dropbox は、両方を1つのサービスにそろえた古典的な例です。
Pinduoduo(EC):友だちと組むと安く買える「チーム購入」

Pinduoduo は、誘う理由を買い方の中に組み込んだ例です。中国の EC サービスで、運営する PDD Holdings の2024年の年次報告書(20-F、2025年に米国の証券取引委員会へ提出)によると、買い手は商品の情報を SNS で共有し、友だちや家族を誘ってチームを組みます。「チーム購入」を選ぶと、より安い価格で買えます。
同じ報告書では、買い手の流入の一部が、買い手が SNS で共有した推薦や商品の紹介から来ているとしています。誘う理由が、誘う人自身の得になっている点が特徴です。
自社なら、購入完了の画面で「友だちと一緒に買うと、2人とも安くなる」と知らせる形が近いです。
Cash App(送金アプリ):送金を受け取った人が、アプリを知る

Cash App は、使うだけで伝わる仕掛けの例です。米国の個人向けの送金・決済アプリで、運営する Block は2025年第2四半期の株主への手紙で、個人間の送金がネットワークと集客の土台だとしています。新しい利用者の大多数が自然な経路で加わるのも、この送金があるからだという説明です。
同社は2025年7月に、グループでお金を集める新機能「Pools」の提供を始めました。今後はアプリを使っていない人も参加できるように広げ、新しい人が Cash App を知りやすくする計画だと書いています。
自社なら、お客様が知人にギフトを贈る場面が近い形です。受け取る人が会員でなくても受け取れ、その画面からサービスを始められるようにします。
Nubank(個人向け銀行):いちばんの集客は口コミで、紹介プログラムも持つ

Nubank は、口コミが起きているサービスに、個別に誘う仕掛けを置いた例です。ブラジル・メキシコ・コロンビアで、主に個人向けのデジタル銀行を運営する Nu Holdings は、2025年の年次報告書(20-F、2026年提出)に次のように書いています。
Our most significant source of marketing is word-of-mouth recommendations from existing customers, which has resulted in viral organic customer acquisition and high retention.
いちばん大きな集客の源は今のお客様の口コミで、それが口コミで広がる顧客獲得と高い継続率につながっている、という一文です。
同じ報告書によると、Nubank は創業以来、毎年平均で80〜90%のお客様を自然な経路で獲得してきました。ブラジルでは、2025年の新しいお客様の71%が自然な経路です。ここでいう自然な経路のお客様とは、広告のリンクを経由せずに来たお客様のことで、サイトやアプリに直接来た人と、今のお客様に紹介された人の両方を含みます。メキシコでは、2025年12月31日時点のお客様1,410万人の半数超を、口コミの紹介で獲得したとしています。紹介プログラムは「member get member」と呼んでいます。
自社でも、紹介プログラムを始める前に、口コミで来ているお客様の数を数えておきます。そうすれば、始めた後に、紹介プログラムで口コミがどれだけ増えたかを比べられます。
Muse(AI アプリ):両方に特典を付け、人数の上限と48時間の期限を置く

Muse は、個別に誘う仕掛けに、人数の上限と期限を付けた例です。Meta が2026年9月に発表した個人向けの AI エージェントで、大半は無料で使え、もっと使いたい人には有料プランがあります。招待コードの仕組みは、Meta の最高AI責任者 Alexandr Wang 氏が2026年9月16日(米国時間)に本人の Xで発表しました。
- 両方に特典: 友だちが登録のときに招待コードを使うと、招待した人と友だちの両方に、10億トークン(AI の利用量の単位)ずつ付きます。
- 人数の上限: 特典が付くのは、友だち20人分までです。20人を招くと、新しい機能を先に使えます。
- 48時間の期限: 招待コードは、参加から48時間以内に設定画面で入力します(同氏の投稿)。
日本では2026年10月23日に提供が始まりました(Meta の発表)。当日の X には、招待コードを共有する利用者の投稿が複数出ており、「参加後48時間以内に[設定]で私のコードを利用すると、私たち両方が10億のMuseトークンを獲得できます」という同じ文面が使われていました。アプリが共有用の文面を用意していると読めます。招待した側が、追加のトークンを確認できたと書いた投稿もありました。
自社でも、紹介コードを入力できる期限を区切り、送る文面を用意しておけば、「1周の速さ」の節で見た、誘われた人がすぐ始められる形に近づきます。
Dropbox(クラウドストレージ):紹介プログラムと共有の、2つの仕掛け

Dropbox は、紹介プログラムと共有の両方でループを回してきました。誰でも無料で登録でき、上位の機能が必要になれば自分で有料プランに切り替えるセルフサーブ型のサービスです。共同創業者 Drew Houston が2010年4月に公開したスライドでは、紹介した人と紹介された人の両方に特典を付けた紹介プログラムによって、登録が恒久的に60%増えたとしています。2018年の株式公開の届出書(S-1)では、利用者がコンテンツを共有し、一緒に作業する中で新しい利用者を招いていると書いています。
自社のバイラルループを点検する:どの段階で止まっているかを数で見る
紹介が増えないときは、特典の額を見直す前に、ループのどこで止まっているかを確認します。手順は次のとおりです。
- 紹介で来たお客様を分けて記録する: 紹介リンクと紹介コードで、誰の紹介で購入されたかを残します。これが無いと、どの段階も数えられません。
- 段階ごとの数を並べる: 設計表の「点検で見る数」を、同じ期間でそろえて並べます。
- 少ない段階を探す: 前の段階に比べて大きく減っているところが、止まっている段階です。比べる相手は、自社の前の月にします。
- 1周の日数を測る: 初回購入から紹介リンクを発行するまでの日数と、リンクが開かれてから購入されるまでの日数を見ます。
- 1か所だけ直して、測り直す: 一度に変えるのは1か所にします。何が効いたかを判断できるようにするためです。
止まっている段階ごとの打ち手の例です。
- 誘う段階: 2回目の購入はあるのに、紹介リンクを発行する人が少ない状態です。紹介を案内する時点を、価値を感じた直後に移します。
- 誘われた人が来る段階: リンクは発行されているのに、開かれた数が少ない状態です。紹介された人が受け取る特典を、リンクを送る文面で分かるようにします。
- 使い始める段階: リンクが開かれても、購入が少ない状態です。紹介コードが入力された状態で購入画面に進めるようにします。
まずは、お客様が価値を感じる時点(商品が届いた日や、2回目に使った日)に紹介リンクを置くところから始めてください。誘う段階と1周の速さを、同時に直せます。
Jolt Me について Jolt Me は、友だち紹介プログラムの立ち上げから特典のお届けまでを自動化する、リファラルマーケティングプラットフォームです。紹介コードの発行、成果の計測、特典の配布、不正の検知までを管理画面ひとつで運用でき、EC・D2C、アプリ・SaaS、スクール、フィットネス・サロンなど幅広い業種で導入いただけます。
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